保険でがんに備えるときに、知っておきたい重要ポイント
このページでは、保険でがんに対策するときに、知っておきたいポイントを整理しています。
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医療保険のメインの保障は入院給付金です。入院1日あたりの保障額が決まっていて、日数分のお金が出る仕組みになっています。
ただし、保障される日数には上限が設けられています。
標準的な日数は、入院1回につき60日間まで、です。
この日数を、120日とか、180日とか、長くすることはできます(延長できる範囲は商品によって異なります)。
また、がんとか三大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)の入院に限り、保障日数を延長することもできます。
もちろん、保障日数を延長すると、保険料は高くなります。
さて、がんの入院については、どのくらいの日数の保障が望ましいでしょうか。
入院給付金の標準的な保障日数である、1入院60日以内というのは、どの程度役に立つのでしょうか?
厚生労働省『患者調査』(平成26年)から、すべての病気・ケガの、入院日数ごとの患者数の割合をグラフにしました。
60日の入院給付金の保障で、92.4%までカバーできることがわかります。ということは、60日の保障でも、頼りにできそうです。
120日までの保障に延長すると、97.3%までカバーできるので、さらに心強くなります。
ただし、カバー率の伸び幅は意外と小さいです。これだったら、60日以内のままで良い、と判断する人も少なくなさそうです。
次に、厚生労働省『患者調査』(平成26年)から、主ながんの、平均入院日数を抜き出しました。
がんの種類 | 平均在院日数 |
---|---|
頭頚部のがん | 31.3日 |
食道がん | 22.7日 |
胃がん | 19.3日 |
大腸がん | 18日 |
肝がん | 18.8日 |
胆道がん | 38.6日 |
膵がん | 23.6日 |
肺がん | 20.9日 |
乳がん | 12.5日 |
子宮がん | 13.7日 |
卵巣がん | 11.1日 |
前立腺がん | 10.2日 |
腎がん | 19.2日 |
膀胱がん | 13.9日 |
甲状腺がん | 16.5日 |
白血病 | 46日 |
子宮頚の上皮内がん | 4.4日 |
表の日数は、あくまでも平均ですが、60日を超えるがんは一つもありません。最も長い白血病でも、60日に届くまで2週間ほど余裕があります。
がんには、再発・転移などの恐れがあります。ただし、1回1回の治療期間は、比較的短期間に収まるようです。
医療系の保険に加入するとき、入院給付金(入院日数分の給付金)の日額を決めなければなりません。多くの医療保険やがん保険では、5,000円と10,000円のどちらかを選べるようになっています。
もちろん10,000円の方が望ましいです。しかし、5,000円と10,000円では、保険料の負担も倍くらい違うので、悩ましいです。
厚生労働省『医療給付実態調査』(平成26年)によると、がん入院の医療費の内容は以下のようになっています。
平均入院日数 | 21.42日 |
---|---|
1入院あたりの医療費 | 1,081,690円 |
上の金額は、医療費の実費です。この金額をもとに、わたしたちの負担額が決まります。
健康保険など公的医療保険を使うと、わたしたちの負担は1~3割の範囲に収まります。
ただし、医療費がこのくらい高額になると、高額療養費制度を使うことで、もっと自己負担を低くできます。この制度は、健康保険など公的医療保険に入っていたら、誰でも利用できます。
この制度は、年齢や収入によって自己負担額が細かく分かれます。
詳しくは、高額療養費制度を使うと、自己負担の月ごとの上限が決まるをご覧ください。
高額療養費制度の自己負担額をもとに、ご自身の適正額を計算しましょう。
入院給付金日額の詳しい説明は・・・
医療保険に加入するなら、がんだけを基準に、保障内容を決めることはできません。
がんは、病気・ケガ全体の中では、入院の期間は短めだが、1日あたりの医療費は高めという特徴があります。
タイプの違う病気・ケガのことも、考えに入れておきたいです。
医療保険の保障内容の決め方は、『医療保険でがんに備える』をご覧ください。
たいていの医療保険やがん保険には、入院給付金(入院日数分のお金が出る)の他に、手術給付金という名称の一時金が、標準で組み込まれています。
この他にも、商品によっては、入院一時金(日数に関係なく、入院したら一時金が出る)や、がん診断給付金(一時金)などが用意されています。
一時金の保障には、入院給付金(入院日数分のお金が出る)にはないメリットがあります。
入院給付金は、入院日数分の給付金が出ます。ということは、入院日数が確定しないと(退院しないと)保険会社に請求できません。
病院への支払いを、給付金を受け取った後にすることはできます(要相談)。しかし、それ以外の費用は、いったんは手持ちのお金から支出することになります。
その点、一時金だったら、支払いの条件がクリアできた時点で、保険会社に請求できます。
たとえば、手術給付金であれば、手術を受けたら、退院前であっても一時金を請求できます。手術は、入院期間の序盤におこなわれるので、すみやかに手続きしたら、退院前にお金を受け取ることができます。
そんな便利な一時金ですが、ほとんどの医療保険、がん保険には、手術給付金が標準で付いています。
これはこれで役に立ちますが、がんの対策としては心細いです。
がんの種類によって、手術をするかどうかには、大きな差があります。
全国の拠点病院やがんセンターなどが加盟する全国がん(成人病)センター協議会の統計データをご覧いただきます。主ながんについて、手術を実施する割合を抜き出しました。
がんの種類 | 手術実施率 |
---|---|
胃がん | 85.7% |
大腸がん | 93.7% |
喉頭がん | 37.9% |
肺がん | 47.6% |
肝がん | 29.4% |
胆道がん | 55.2% |
膵がん | 35.0% |
乳がん | 92.2% |
子宮頚がん | 62.5% |
子宮体がん | 93.6% |
青字は、手術実施率50%以下です。手術をおこなわないケースは、意外と多いことがわかります。
がんには、三大治療と呼ばれる、主流の治療があります。手術、放射線治療、抗がん剤治療(化学療法、薬物療法)の3つです。
このうち、放射線治療と抗がん剤治療は、患者の病状や体力に問題が無ければ、通院で実施されることが多いようです。
がんになったときに、入院給付金に加えて、一時金を確実に受け取りたい、ということなら、手術給付金だけでは不安があります。
がんで入院したら、確実に一時金がでそうな保険・特約には、以下があります。
入院したら一時金が出る、というタイプの給付金です。
医療保険、がん保険の中には、手術給付金のかわりに、入院一時金を付けられるものもあります。
がん診断給付金(一時金)、三大疾病一時金、特定疾病一時金、七大生活習慣病一時金など、保険会社によっていろいろあります。
がんの診断が確定したら、一時金を請求できる、という点ではどれも同じです。がんは、三大疾病にも、特定疾病にも、七大生活習慣病にも含まれます。
これらの違いは、がん以外の病気をどこまで保障するか、にあります。
このタイプの一時金は、保険会社による違いはありますが、50~300万円くらいの、大きな金額であることが多いです。
仮に300万円の一時金を受け取るなら、他のがん関連の保険が無くても、金銭的には乗り切れそうです。
ただし、保険料もそれなりの金額になります。
ここまで、入院することを前提に説明してきました。
通院と比べて、入院の方が、短期間にまとまった出費になる危険が大きいです。家計への負担の大きさを考えると、まずは入院費用の準備を進めたいです。
ただし、がんの場合は、通院で治療に取り組む患者の数が、とても多いです。入院患者より多いです。通院のことも、あわせて検討したいです。
厚生労働省『患者調査』(平成26年)には、病気ごとの、年間の入院患者数と通院患者数の統計も含まれています。
そこで、主にがんについて、全国の入院患者数と通院患者数を拾い出してみました。
がんの種類 | 入院患者数 | 通院患者数 |
---|---|---|
咽頭がん | 3,700 | 3,600 |
食道がん | 4,900 | 3,400 |
胃がん | 13,500 | 19,200 |
大腸がん | 18,900 | 28,000 |
肺がん | 18,800 | 16,100 |
肝がん | 6,900 | 5,500 |
胆道がん | 3,800 | 2,300 |
膵がん | 5,600 | 3,800 |
乳がん | 5,400 | 24,300 |
子宮頚がん | 1,700 | 3,100 |
子宮体がん | 1,500 | 2,900 |
卵巣がん | 2,200 | 2,800 |
前立腺がん | 4,900 | 20,000 |
腎がん | 1,900 | 2,900 |
膀胱がん | 4,300 | 6,400 |
白血病 | 4,600 | 6,400 |
赤字が人数の多い方です。
入院患者は、入院の前後に通院しているはずです。よって、通院患者数の方が入院患者数より多くても、驚くことではありません。
それでも、上表を見る限り、通院のみでがん治療に取り組んでいる患者数は、かなりの数に上りそうです。
手術後の経過確認の通院だったら、年に数回程度で、費用も小さいです。日々の家計のやりくりの中で、対処できそうです。
しかし、放射線治療となると、1~2ヵ月の間、毎日のように通院し、放射線の照射を受けるので、まとまった出費になります。
抗がん剤治療だと、通院の頻度は、放射線治療ほど過密にはなりません。ただし、治療期間や通院の日程は、そのときにならないと分かりません。そして、投与する抗がん剤の価格によって、費用は大きく上下します。
ちなみに、高額療養費制度は、通院費用にも適用できます。月々の負担が、同制度の上限額を超えることはありません。
予測が難しい通院の費用ですが、この費用まで保険でカバーするかしないかによって、保険商品の選び方が異なってきます。
医療保険は、原則として入院のための保険です。通院は苦手です。
保険会社は、個々の通院のことを、治療に必要不可欠なのか気休め(実は必要ない)なのか、判断できません。
そのため、保険会社は、通院費用の保障には消極的です。
いくつかの医療保険に、通院特約が用意されていますが、ほとんどは、入院前後の数ヵ月間の通院だけを保障します。がんの対策としては、手薄に過ぎます。
がんの通院治療で、頼りになりそうな保険には、次のものがあります。
手術給付金は、手術を1回受けるたびに、受け取ることのできる一時金です。
これと同じように、放射線治療を受けると、一時金をもらえる保険商品が増えています。
手術給付金の中に放射線治療給付金が含まれている商品もあれば、独立して放射線治療給付金が提供されている商品もあります。
いずれにしても、放射線治療の費用については、全額ではないかもしれませんが、保険から費用を受け取れるようになっています。
放射線治療給付金ほど活発ではありませんが、抗がん剤治療で給付金が出る保険商品も、増える傾向にあります。
医師によるがんの診断が確定したら、50~300万円の一時金が出る保険や特約が、各社から販売されています。
がん診断給付金(一時金)、三大疾病一時金、特定疾病一時金、七大生活習慣病一時金など、一時金の名称は様々です。それぞれ、対象とする病気の範囲に違いはありますが、がんの取り扱いに関しては、どれも似ています。
『治療費総計で300万円あれば安心というアンケート結果』というようなアンケート結果があります。
一時金の金額を大きくすれば、通院費用の全額をカバーできそうです。
ただし、保険料が高くなりやすいのが難点です。
いっそのこと、がんへの対策は、がん診断給付金(一時金)の保険に絞る、というやり方もあります。
わたしの知る限りでは、オリックス生命の「がん通院特約」や、SOMPOひまわり生命の「医療用がん外来治療給付特約」や、三井住友海上あいおい生命「ガン治療通院給付特約」が、がん専用の通院特約です。
治療方法や保障日数に制限はありますが、入院の有無にかかわりなく、通院日数に応じた給付金が出ます。他社より一歩踏み込んだ保障内容です。
といっても、それぞれ制限事項が設けられています。
詳しくは放射線治療、抗がん剤治療などの通院に強い医療保険をご覧ください。
がんについて調べると、5年生存率、10年生存率という言葉に行き当たります。がんになって、5年間または10年間生存する確率、というような意味です。
再発しやすい病気だから、こんな言葉が使われています。生存率の統計データが蓄積されています。
というか、3.5人に1人ががんで亡くなっていますから、一生付き合う病気くらいに考えたいです。
治療費用の準備についても、再発の可能性を頭に置いておきたいです。
医療保険やがん保険は、再発に対応できる仕組みになっています。一時金が出るのは〇年に1回、というような制限はありますが。
この点は、保険を使うメリットの一つです。
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