見直さないで長く続けられる保険の選び方、入り方
保険に加入する年齢が高くなると、1回あたりの保険料も、生涯に払う保険料累計も増えます。
ということは、いったん加入した保険を見直すのは、金銭的に損になります。
そこで、見直さないで長く続けられる保険の選び方、入り方をご案内します。
保険に加入する年齢が高くなると、1回あたりの保険料も、生涯に払う保険料累計も増えます。
ということは、いったん加入した保険を見直すのは、金銭的に損になります。
そこで、見直さないで長く続けられる保険の選び方、入り方をご案内します。
がんは、日本人にとって最も重要な病気だけに、医療技術の進歩は目覚ましいです。
それに歩調を合わせるように、がんの保険もしばしば改定されたり、新商品が登場します。
こんな状況を見ていると、何年かごとに保険を見直す必要があるように思えます。
しかし、そんなことをしていては、保険料の負担がどんどん大きくなります。
アフラックの旧商品『新・生きるためのがん保険Days』に30歳で加入した男性が、40歳のときに新商品『生きるためのがん保険Days1』へ入り直すとします。
入院給付金10,000円のプランで、保険料は月払いの終身払込とします。
旧商品をそのまま続けるときと、新商品に切り替えるときの保険料を、下表で比較しました。
月々の保険料 | 80歳までの 保険料累計 |
|
---|---|---|
旧商品を継続 | 2,870円 | 1,377,600円 |
40歳で見直し | 5,025円 | 2,412,000円 |
40歳で見直すと、10歳をとったので、月々の保険料はけっこう上がります。そして、80歳(男性の平均寿命)までの保険料累計は、100万円以上も増えました。
最新の商品に切り替えることで、これまでになかった新しい保障・サービスが手に入ります。
上の例だと、新商品『生きるためのがん保険Days1』に見直すことで、4つの新しい特約が利用できるし、通院給付金や診断給付金はパワーアップします。
しかし、新商品には、旧商品から変更されていない部分もあります。というか、変更されていない部分の方が多いです。
保険を見直すと、変更されていない部分まで新しくなります。変更されていない部分も含めて、見直し時点の年齢で保険料が再計算されて、値上がりします。
この値上がりの分は、加入者にとってはムダな出費です。
新しい保障・サービスに魅力を感じても・・・
保険をそっくりそのまま見直すのは、ムダな出費に直結します!
保険の経年劣化は、加入する人の大半にとって、他人事ではありません。
下のグラフは、『がんの統計2017』(がん研究振興財団)をもとに、がんにかかる割合を年代別にまとめたものです。
がんにかかる割合は、高齢になるほど高くなっています。グラフによると、もっともがんにかかりやすいのは80代です。
50歳で保険に加入して80歳で発病するとしたら、その間に30年間経過します。
30年もあれば、がんの医療技術に変化が生じているでしょう。
20代、30代で保険に加入するなら、ヘタしたら、保険を使うまでに50年位かかるかもしれません。
そうなったときに、自分の保険が時代遅れになって、さほど役に立たないというの困ります。
加入にあたって重視すべきは・・・
加入時点で最新内容の保険に入ることより、数十年後でも現役で使える保険に入ることです。
がんの治療技術は、急速に進歩しています。それを考えると、保険をときどき見直すのは当然と思えるかもしれません。
しかし、実際には、経年劣化しやすい保険と、経年劣化しにくい保険に分けることができます。
経年劣化しやすい保険には、共通する特徴があります。それは・・・
給付金の支払条件に、特定の治療法や具体的な日数などが、指定されている。
たとえば、以下のような場合です。
治療法がどんどん進化していますから、保険からお金が出る条件の中に、治療法が指定されているのは危険です。
と言っても、程度による違いはあります。
現在三大治療と呼ばれる手術、放射線治療、抗がん剤治療が、数十年で無くなるとは考えにくいです。しかし、実施頻度が今より少なくなる可能性はあります。
また、新たに第四の治療法が台頭してくる可能性はあります。それに対応できない危険性は、大いにあります。
よく見かけるのが「20日以上の入院」「60日以上就労不能」のような支払条件です。
以下は、厚生労働省『患者調査』(平成26年)にもとづく、がんの入院日数(入院1回あたり)の推移のグラフです。
この10年間で、がんの平均入院日数は、10日以上も短くなっています。
現状で「20日以上の入院」という条件は妥当でも、10年後、20年後には非常識かもしれません。
というように、給付金の支払条件に、日数のような具体的な制限が設けられているのは危険です。
別の不安材料として、請求漏れの危険があります。
給付金の支払条件が細々していると、いざ保険を使う頃には記憶があいまいになって、請求を忘れてしまうかも・・・
経年劣化が心配される保険商品は、特にがん保険の分野に多いです。
特定の病気にターゲットを絞った保険なので、治療の現状へのきめ細かな対応を、“売り”にしがちです。
それが裏目に出やすいようです。
ここで取り上げているのは、基本部分の劣化が心配な商品です。
一部の特約のみ劣化しそうな商品は、外しています(特約を付けなければ、逃れられるので)。
商品名などに“治療〜”の文字が入っていると、それだけで要警戒です。
こういう商品は、がん治療の実際を踏まえた保障内容になっています。
現時点では、最新の保障内容ですが、逆に言うと、年月が経過すると、時代遅れになることを意味しています。
この商品は、「手術」「放射線治療」「化学療法(抗がん剤治療)」「緩和ケア(緩和療法)」の4つの治療法に、保障を対応させています。
将来新しい治療法や薬品が登場しても、上の4つのどれかに当てはまるなら、保障の対象になります。その点は、配慮されています。
裏返すと、4つのいずれにも当てはまらない治療法は、対象外になります。
ここで取り上げている他の商品に比べると、“治療保障”を打ち出してはいません。
しかし、保障内容を細かくチェックすると、経年劣化しそうな支払条件がいくつも見つかります。
該当するものに●を記載しています。
給付金 特約等 |
治療法 制限 |
日数等 の制限 |
---|---|---|
特定診断給付金 | ● | ● |
通院給付金 | ● | |
抗がん剤・ホルモン剤治療特約 | ● | |
診断給付金複数回支払特約 | ● | |
特定保険料払込免除特約 | ● | |
外見ケア特約 | ● |
多くの支払条件に、治療法が指定されています。
これは危険です。新しい治療法が登場したときに、対応できなくなる恐れがあります。
商品名などに“治療〜”の文字が入っていると、それだけで要警戒です。
こういう商品は、現在の治療の実際が保障内容の根拠になっています。
ということは、将来がん治療に変化が起こったら、時代遅れに陥りやすいことを意味します。
この商品は、「放射線治療」「抗がん剤治療・ホルモン剤治療」の2つの治療法が、保障の軸になっています。
なおかつ、自由診療(健康保険などの対象外の治療)による抗がん剤治療・ホルモン剤治療もカバーしています。
あらゆるがん保険の中でも、思い切った保障内容です。
ただ、さして優先度が高くない自由診療を主契約に含めながら、手術を特約とするなど独特の仕組みです。
経年劣化も心配ですが、それよりも、仕組みが独特すぎて、一般の消費者が誤解したまま加入しないか、不安になります。
この商品の中心となる保障は、がん治療給付金です。
手術、放射線治療、抗がん剤治療のいずれかの治療を受けるか、末期がんで入院または通院を始めることが、この給付金の支払条件です。
このような治療保障に重きをおいた商品は、時が流れて治療法が変化するとともに、劣化の危険が膨らみます。
20年後、30年後になって、新しい治療法が主流になったとして、それが手術、放射線治療、抗がん剤治療のどれにも該当しないときは、保障の対象外になってしまいます。
『ガードエックス』には、使い勝手の良さそうな通院給付金(ガン通院サポート給付金)があるので、心ひかれますが、お勧めできません・・・
商品名、給付金名などの中に、“治療〜”という言葉が入っていたら、要警戒です。
保険商品の、がんに関する給付金・保険金の中で、もっとも経年劣化しにくいのが、診断給付金です。商品によっては、診断一時金と名付けられています。
この給付金は、治療法が今後どう変化しようとも、ずっと役に立ってくれそうです。
診断給付金は、医師によるがんの診断の確定が、給付金の支払条件です。
だから、どんな治療を受けようと、あるいは治療法が決まる前でも、所定の手続きを取ると、給付金が出ます。
診断給付金は、治療法から分離されています。だから、治療法に変革があっても、その影響を受けません。
診断給付金には、もうひとつ、大きなメリットがあります。
診断の確定が支払条件なので、早いタイミング(治療開始前とか、治療の序盤とか)に、給付金を受け取ることが可能です。
診断給付金には、あきらかで確実なメリットがあります。
それだけに、ほとんどの生命保険会社が提供しています。しかも、複数の形で提供しています。
よく見かけるのが、以下のパターンです。
どれを選んでも、がんの診断給付金について、違いはほとんどありません。
よって、がんの診断給付金以外のところが、選ぶ決め手になります。
より詳しい説明は・・・
際立ったメリットのある診断給付金ですが、乗り越えなければならないハードルが2つあります。
どちらもそこそこ大きなハードルです。
他の保険とのバランス、負担できる保険料、保険以外の治療費の原資の有無などによって、選択は変わります。
より詳しい説明は・・・
上で説明した診断給付金とは別の選択肢として、入院給付金と通院給付金を軸に保障プランを作る方法も、経年劣化しにくいです。
病院で治療を受けるということは、入院するか通院するかのどちらかです。
ということは、入院費用と通院費用の両方に備えられるなら、将来新しい治療法が登場しても、対応できそうです。
入院費用に関しては、ありふれた入院給付金で間に合います。がん保険ではなく、ごく一般的な医療保険の入院給付金でも、十分に役に立ちます。
というのは、がんは再発・転移による複数回入院の恐れはあるものの、入院1回あたりの費用負担は、そんなに深刻ではないからです。
以下は、厚生労働省『患者調査』(平成26年)にもとづく、がんの入院日数の推移を表すグラフです。
がんの平均入院日数は、すべての病気・ケガによる入院の平均より短いです。しかも、速いペースで短縮化しています。
ちなみに、健康保険等の高額療養費制度を活用すれば、わたしたちの自己負担額は、入院期間で決まります。
ということは、入院1回あたりの費用負担に限って言うと、がんはそんなに怖くありません。がん保険や医療保険の標準の入院給付金で十分に対処できそうです。
それに対して、通院給付金を選ぶのは難しいです。以下の2つの難しさがあります。
たとえば、東京海上日動ひまわり生命『あんしんがん治療保険』のがん通院特約だと、保障されるのは、入院前60日以内、退院後180日以内の通院に限定されます。
要するに、入院前後の数カ月間の通院しか保障されません。とても限定的です。
たまたま『あんしんがん治療保険』を例にあげましたが、通院特約の大半に、このような期間制限が設けられています。
頼りない通院給付金がまだ多数派ですが、最近になって、力強い通院給付金が、いくつか登場しています。
外来治療給付金は、1年間につき120日までを限度に、医師によるがんの外来治療(通院・往診)を保障します。入院の有無は関係ありません。
公的に認められる治療なら、幅広く保障されます。
1年間につき120日までという限度は、十分に長いです。しかも、次の1年に入ったら、また120日までの保障を受けられて、通算無制限です。
実際に使うときに、日数制限を気にしながら通院することは無いでしょう。
ガン治療通院給付特約を付加すると、診断確定から5年間の、がんの通院が保障されます。
5年経過後に、再発・転移が見つかったり、入院を開始したら、そこから5年間は通院保障を受けられます。
そして、公的に認められる治療なら保障されます。治療法の制約はゆるやかです。
終身ガン通院サポート給付特約を付加すると、1年に60日を限度に、がん治療のための通院費用を保障してくれます。
診断確定後の、医師による外来・往診の治療であれば、保障されます。幅広くて安心できます。
ただし、残念ながら、上で説明したように、『ガードエックス』の主契約は治療給付金で、経年劣化しやすいです。その点ではお勧めできません。
経年劣化しにくい保険の活用として、「診断給付金(一時金)」と「入院給付金・通院給付金の組み合わせ」の、2つをご案内しました。
片方だけでも、十分な対策が可能です。ただし、それぞれ強み・弱みがあります。
2つの方法の強み・弱みを下表に整理しました。
保障 | 強み | 弱み |
---|---|---|
診断給付金 |
|
|
入院+通院給付金 |
|
|
診断給付金は、使い勝手に優れます。しかし、一時金の金額を加入時点で決めるので、治療にかかった実際の金額と、かけ離れる危険が大きいです。
一時金を出来る限り大きくしておけば安心できますが、それをすると保険料の負担がきつくなります。
他方、安心して託せる通院給付金は限られます。候補になる商品数が、少なくなってしまいます。
そういう場合、通院給付金が優れていても、他の点が物足りなくて、選べる商品が無い・・・という状況にハマるかもしれません。
そこで、2つの方法を組み合わせる、という発想もありえます。
上の2つの方法を組み合わせる、つまり診断給付金、入院給付金、通院給付金の3つの給付金を組み合わせることで、それぞれの弱みを補うことができます。
たとえば、以下のような役割分担が考えられます。
給付金 | 役割 |
---|---|
診断給付金 |
|
入院給付金 | 入院費用。 |
通院給付金 | 通院費用。 |
これなら、診断給付金を低い金額(50万円とか)に設定しても、余裕を持てそうです。
逆に、診断給付金をある程度大きくできれば(100万円以上)、通院給付金の弱い商品を選んでも、通院費用を補完できます。
安心して託せる通院給付金が少ないことを考えると、いっそのこと、診断給付金と入院給付金の2つのに絞った方が、商品の選択肢は広がります。
その場合、各給付金の役割分担は、以下のようになります。
給付金 | 役割 |
---|---|
診断給付金 |
|
入院給付金 |
|
通院費用を、診断給付金と入院給付金で埋め合わせるなら、いずれかあるいは両方の金額を、高めに設定しておきたいです。
たとえば、診断給付金100万円以上か、入院給付金日額10,000円以上というように。
がん専用の診断給付金と入院給付金は、がん保険だけでなく、ほとんどの医療保険で提供されています。よって、保険商品の選択肢は一気に広がります。
それが、この組み合わせの最大のメリットです。
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